2015-01-01から1年間の記事一覧

怒られなくなるということはつまり諦められてしまったということに直結するのですが、今はもう誰のことも怒りたくないしそもそも自分は人を怒れる立場なのか。まあ怒ることと怒りを感じることはある意味別物なのですが。

自分は本当の安心と本当の自信というものを知らないのだなとツクツクボウシ……ツクツクボウシ……

近頃、自分は底に穴の空いた、単なる空っぽな器だなとつくづく思う。人のつくった何かを取り入れているときは少し生き生きするけれど、そうでないときは何もない。

自己顕示欲と自尊心の低さが、こんな感じ

レモンとナイフ(2)

「おかえり」 陸が家へ戻ると、奥から声がかかった。すでに家主が帰ってきているらしい。夕食の準備をしているのか、トントンと包丁の音がする。陸はその音のする台所まで行き、顔を出した。 「ただいま」 「どうしたんだよ、その格好。なんていうか、湿って…

レモンとナイフ(1)

沈みかけの西日は、赤いというよりほとんど黄色で、それを直に正面から浴びている陸からは、向かいの席に座る乗客たちの顔が薄黒く見えた。 帰宅ラッシュとまでは行かないが、ちょうど部活などをやらない中高生たちの帰宅時間となっているため、それなりに座…

槿花の夢

まちをとり囲むような山々は日の光を浴びていかにもこの季節らしく青々とし、窓に染み入る蝉の声は止むことを知らぬように延々と続く。 指導員が教室へ入ってきてエアコンの電源を入れたことにより蝉の声も遠のき、生徒たちもやっと勉強をする気になってくる…

京都追想録・いち

堂本印象の「ぶどうとレモン」。一目惚れした作品のひとつです。色遣いがめちゃくちゃ可愛いです。龍安寺へ行った際にどこか美術館へも行きたいという話になり、近場で無料公開をしている美術館を探してみたら、すぐ近くで「堂本印象美術館」なるものが無料…

人からどう思われたいとか、自分で自分をどう思いたいとか、全て投げ打って、言葉を紡げるようになりたい。

遠く無い季節

何と無く山吹色を見ると泣きたくなるので人の情緒というものは解らん。

青夏(せいか)のみぎり(3)

「悪い」 守は気まずそうに引き攣らせた薄い笑顔を見せると、再びドアを閉めて何処かへ行ってしまった。 「ち、違うんだって……!」 弁解の言葉は鉄製のドアにぶつかり、虚しく床へと転がった。 「痛い」 千一(ゆきひ)は自分のすぐ下から静かに発せられた声…

幻にあらず

今朝、祖父が死んだ。 まるで眠っているだけのような顔をして死んでいた。 触れてみたその肌は、もっと温かくてもよさそうな感触だったが、およそ体温とよべる熱は存在しなかった。 中学二年の後半から学校へ通えなくなってしまった僕は、三年に上がった二ヵ…

青夏(せいか)のみぎり(2)

「ユキ君」 杉崎は周囲の視線など意に介さないといった様子で、千一に向かって手を振った。視線は一気に千一に集まり、次に二人の間を行き来した。容姿を比べられているのが直感で分かる。千一は慌てて鞄に荷物を突っ込み、視線から逃れるようにして杉崎の元…

この家で眠るのは最期なんだな、と思いながら眠ります。

青夏(せいか)のみぎり(1)

見晴らしのよいこの部屋に千一(ゆきひ)が転がり込んでから、早一ヶ月が過ぎた。今年から院に上がった従兄の守(まもる)が、彼の兄である浩司(こうじ)が妻も引き連れて海外へ長期出張をしている間に借り受けている部屋である。同じく今年度から都内の大…

行く春

きっかけは、ちょっとしたことだった。 今朝、樹は、いつものバスを目の前で逃した。たったそれだけのことだが、樹の中で、何かがぷつりと切れる音がした。 この停留所には、三十分に一本しかバスは来ない。樹は、次に来るバスを待つ気など端からなかった。…

思い込みが成功すれば運命となり、思い込みが失敗すれば単なる虚しい思い込みとして終わる。泣きたくなるよね。

朧月夜のうろおぼえ

朧月夜のうろおぼえ夜風に流れるカーテンに消えつ隠れつする姿伸ばす手とりて寄る窓辺隣で奏でる口笛と繋いだその手のその白さ朧月夜のうろおぼえ

ミルクを混ぜたような、優しい色をした空。そこに浮かんだ真っ白い半月が美しい。すっきりと潔い断面が、寸分の狂いもない弧が、美しい。

こんなに引越しをする人生になるとは思わなんだ……この際、目指せ葛飾北斎級か……

自分とは

自分には、客観的に見た、ある意味現実的な自分と、自分で「こうだ」と思っている自分とがあると思う。その二つが完全に一致する人などいないと思う。周りからの評価を客観的だと言うかもしれないけれど、誰かの意見は結局誰かの主観から来るものだし、全て…

こういうムカつきは、自分はそう思えないことに対する悔しさの表れなのだろうな。

何年か前に、「もう知ることができないことは真相は分からないままで『分からなかったこと』として胸に留めておくべきだしその方が精神衛生上良い」と思ったんだけど、その考え方にすでに名前(心理学用語)がついていて悔しい〜って思った記憶があるんだけど…

大桜

すでに三百年も生きた桜。きっとあと二百年は生きる。桜にだったら食われてもいい。

桜に対して色々と妄想を巡らせてしまうのだけど、さっきは束縛の激しい年老いたパトロンから逃げた(けど結局一人では生きていけなくて死んでしまう)高級娼婦の姿を重ね合わせた。パイヴァ50%。

桜は枝についたまま枯れると、ひどく惨めな姿になる。その姿を見せないために風に散るのか。しかも、風に散る姿すら美しい。まるで老いを恐れて美しい姿のまま美しい死に方を選ぶ少女のよう。その昔、シェイクスピアの作品のヒロインたちの死に方を真似て自…

愛されたいという欲求の中には、知って欲しいという欲求が含まれているはずだ。相手の機微に全く鈍感な場合、それは一人の人間に自己肯定感を与えるには至らない。

悲しすぎて吹っ切れてきた

散れる桜

必ず散ってしまうから、桜は儚く悲しい。風に散れない桜はもっと悲しい。いつまでも後ろを見てしまう私は、本の間に桜の花や落ち葉を閉じ込める癖がある。もう何年もやっているので、どれが何時のだか怪しい。

自分がある、とはどういうことなのだろう。