2014-09-01から1ヶ月間の記事一覧

得られなかったものを「得られなかった」のだと認識したときの衝撃は、喪失体験に匹敵するのだろうか。それとも、得られなかったものへの憧憬が強過ぎて、それを得たときの幸福が自分には計り知れず、そんなものを失うときの悲しみは、やはり同じく 計り知れ…

もしかしたら人間が感覚できる次元は世界そのものからしたら極僅かなのかもしれない。孔雀は四原色でものを見れる。蚊は二酸化炭素を感知できる。蛇は赤外線を感知できる。昆虫は紫外線を感知できる。蝙蝠は超音波を感知できる。人間は全能なわけではないし…

紫陽池

あるところに、それはそれは美しい娘がいた。名は紫陽という。その母である藤奈もまたやはり美しく、若き頃には村一番の縹緻よしと言われていたが、自然とその称号は年頃を迎えた紫陽に受け継がれる形となった。 紫陽も藤奈も透き通るような白い肌をしており…

幽霊論

私は視えない人だけれど、幽霊の存在を信じている。信じているわりにはホラー映画や怖い話やお化け敷も、あまり怖いと感じずに楽しめるのは、きっと自分が本物を見ることができないと分かっているからなのだと思う。 けれども、そういう体験が皆無というわけ…

雨に願う

空は重たく薄墨色に曇り、いつ雨が降り出してもおかしくない。雨が降ればあの人は来ないことを知っている。雨にどうか降らないでくれと願う。 私の願いを聞き入れてくれたのか、雨は降らずにいてくれた。 あとはあの人が訪ねて来るのを待つのみだ。待ちかね…

地下鉄

用事を済ませ、家路につこうと地下鉄に乗り込む。進む道はただただ単調に暗闇が続くばかりで、窓外を眺めていると気が狂いそうになってくる。しかし、すいているだけまだましだ。ぎゅうぎゅうに混んだ地下鉄の車内は呼吸すらままならず、酸欠で頭がぼんやり…