2014-01-01から1年間の記事一覧

幽霊論

私は視えない人だけれど、幽霊の存在を信じている。信じているわりにはホラー映画や怖い話やお化け敷も、あまり怖いと感じずに楽しめるのは、きっと自分が本物を見ることができないと分かっているからなのだと思う。 けれども、そういう体験が皆無というわけ…

雨に願う

空は重たく薄墨色に曇り、いつ雨が降り出してもおかしくない。雨が降ればあの人は来ないことを知っている。雨にどうか降らないでくれと願う。 私の願いを聞き入れてくれたのか、雨は降らずにいてくれた。 あとはあの人が訪ねて来るのを待つのみだ。待ちかね…

地下鉄

用事を済ませ、家路につこうと地下鉄に乗り込む。進む道はただただ単調に暗闇が続くばかりで、窓外を眺めていると気が狂いそうになってくる。しかし、すいているだけまだましだ。ぎゅうぎゅうに混んだ地下鉄の車内は呼吸すらままならず、酸欠で頭がぼんやり…

迫るような雨音には忍び寄る幻影の香が幽かに漂って、その気配に攫われてゆく期待と二度とは戻れぬ怖ろしさとが、互いに満ち引きを繰り返す。しかし、緊張感を持ったまま一向に間近に訪れる様子はなく、幻影は外からではなく、内からやってくるものなのだと…

オフィーリア

ミレイがこれを描くためにモデルのリジーを水の張ったバスタブに4ヵ月間毎日浸からせた結果、肺炎を起こさせちゃってリジーの両親に治療費を請求されたらしい。ちなみにリジーは後にロセッティと結婚したけどアヘンの過剰摂取で亡くなった。