ふと、中学生のときのことを思い出した。
来客用の応接間や、特別学級の子たちが使うらしい広さはそこそこあるものの机と椅子が一対しかない壁に地図や学習用の表が貼られた教室、特別学級の子たちの音楽室がある、三階の端っこの辺り。
いつも鍵がかかっていて開かない古いシャワー室があった。その昔、宿直の先生たちが使っていたらしい。三年生だった当時その周辺の掃除担当だった私は同じ班の友達と「お化けでそう〜」とか言っていた。
その扉がある日突然、開いた。
よく教室にある青くて大きなゴミ箱の中に大量の煙草の吸い殻、洗面台の上の小さな戸棚には、煙草のストックとライター。煙草の匂いが充満していた。
お化けではなく、ヘビースモーカーだった。

だが、その周辺で不可解な体験もした。
先ほど述べた、特別学級の音楽室。そこは、誰もいないはずなのに、ひとりでにピアノの音が聞こえてくるらしいという噂があった。しかも、毎回同じメロディーで。
当時一年生だった私は5・6時間目の総合の時間に友達二人と抜け出してその真偽を確かめることにした。
静かに教室に歩み寄って三人一緒に扉に耳を当てる。
ピアノの音はしなかった。その代わりに、噂に聞いた通りのメロディーで、のこぎりを引くような音が聞こえた。
三人で目を合わせて頷くと、静かに教室を離れた。自分たちのクラスへ戻りながら、こんな音が聞こえたね、と確かめ合うのだが、おかしなことが起きた。全員、聞こえた音が違っていたのだ。私にはのこぎりの音が聞こえたが、一人には金槌、一人には電動ドライバーのような音。
けれど、みんなメロディーは一緒だった。
一階の技術室に元技術教員なのか大工なのか分からないけれど、そういう霊が出るという噂(技術の先生たちが夜に準備室で会議をしていたところ、皆で見たと実際に技術の先生が言っていた)と関係があるのかどうかはわからない。